大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)1909 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告弁護人池辺甚一郎の上告趣意書は末尾に添えた別紙記載の通りであつて、第

一点ないし第五点にわたつているが、結局被告人Aの近親からの上申書と弁護人が

提出した被害者の賠償領収証を証拠として取調べなかつたことに対する非難である。

(一) 被告人の父Bおよび叔父Cから本人保釈後の改過遷善を申立て将来の監

督を誓う上申書を提出し、また弁護人からは和解の成立を証明するため被害者の賠

償金領収証を提出したのに、原審はそれを法廷に持ち出して証拠調べをしなかつた、

と上告論旨第一点は非難する。この二つの書類は記録に綴じ込まれているから、量

刑の参考になつたこととは思われるが、証拠として取扱われたことは公判調書にあ

らわれていない。しかし上申書は証拠書類ではないし、領収証も犯罪そのものに関

する証拠ではないから、それについて証拠調べをしなくても審理不尽とは言われな

い。

(二) 上告論旨第二点は、原審が前記の書類について証拠調をしなかつたのは、

旧刑事訴訟法第三四二条に公判期日前に提出された証拠書類は公判廷に於て取調ぶ

べしとあるのに違反する、と非難する。しかし、こゝに「公判期日前」というのは

第一回公判期日前の意味であること、大審院時代からの判例であり、当裁判所にも

判例がある(昭和二三年(れ)第五〇八号同年十一月四日言渡最高裁判所第一小法

廷判決)そして前記の上申書は原審第一、二回公判後に提出されたものであること

記録上明かであり、また領収証は記録綴込の順序から見て第三回公判の日に提出さ

れたものと推測されるから、たといこれらが証拠書類であるとしても、それを公判

廷に持ち出さなかつたことが旧刑訴第三四二条違反にはならない。

(三) 上告論旨第三点は、原審判決は「公平な裁判所の裁判」でないから憲法

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第三七条違反である、と主張するが、同条がかようの場合に相当せぬことは、当裁

判所大法廷に判例がある(昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日言渡最高

裁判所大法廷判決)。

(四) 上告論旨第四点は、原審が第一審と同一の刑を言い渡したことに抗議し、

同第五点は刑の執行を猶予しなかつたことを不当とする被告人は第一審判決後被害

者に弁償し改過遷善に向つているのだから今少し寛大な取扱があつてもよかろう、

という不服は一応うなづかれるが、結局量刑不当の主張であつて、上告の理由とは

なり得ない。

これを要するに上告論旨はいずれも採用するを得ず、本件上告は棄却をまぬかれ

ない。

よつて、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項、旧刑事訴訟法第四四六条に

従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官 安平政吉関与

昭和二四年四月二六日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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